
南部弁講座
はじめに。
このコーナーでは、基本的に「」で囲んだものを原語<>で囲んだものを
翻訳語として扱っており、赤字は難しい言葉、(全部難しいのですが)
青字は特に難しい言葉を表しています。
| その1で紹介している南部弁 | ||||
| が、ぎ | イ | ス | こっぱずがしい | わがね |
| へる | はんかくさい | おほ | おじる | かれる |
10 蚊にかれる 物がかれる
蚊に刺されることを「蚊にかれる」と言います。寝相の悪い兄弟に「ほら、おんじぃんど、
へちょこだしてねでれば蚊にかれるぃぇ」<ほら兄弟たちよ、へそを出して寝てると蚊に
刺されるよ>などと言いながら母親にタオルケットなんぞを掛けてもらった記憶は
残念ながらありません。
そして次の日の朝「やーかりぃー、ゆんべな蚊にかれだじゃ」<わー痒い、
昨夜蚊に刺されたよ>といいながら起きてくるのが夏の朝の常でした。
刺されることと食べられてしまうことを一緒に「かれる」と言います。
ですから「やーおんじさあんずぎばっとかれでまったじゃぁ」
<あー弟にあんずぎばっと食べられてしまったよ>と使います。
そしてもう一つの「かれる」こちらは「かす」<壊す>のほうで
<壊れる>を意味します。
ジャイアン「おうのびたぁ、んがぁいいのたなってらな、いっとごま、わさかへでぃや」
<おうのびた、お前いい物持っているな、ちょっと俺に貸せよ>
のびた「わがね、わがねぇじゃぁ」<駄目だ、駄目だよ>
ジャイアン「いがべな、いっとごまだへんでよ」<いいだろうちょっとの間だからさ>
のびた「わがねえじゃあ、んがあらげねへんでかされるじゃ」
<ためだよ、君は荒っぽいから壊されてしまうよ>
ジャイアン「なんどぅ、わさかさねばふたぐぇぃ」
<なんだと、俺に貸さないとぶんなぐるぞ>
のびた「やっ、かれだじゃー、やー、んがあらげねへんでぶっかれでまったべなー」
<あっ壊れてしまった、あー、君が荒っぽいから壊れてしまっただろうが>
と言うわけで「かれる」発音は一緒です。
最後に出てきた「ぶっかれる」は完全に壊れてしまう様子を表しています。
”修理不能”という感じですね。
「ぶっかす」<ぶち壊す>
9 「バスがらおじろ」「はやぐおじでこい」
この「おじる」は<落ちる>という意味なのですが、「バスがらおじる」は<バスから降りる>
という意味になります。ですから、「おじろ」は<降りろ>「おじでこい」は<降りてこい>
なのですが、「やッ!じぇんこおじでら」は<あっ!お金が落ちてる>なのです。
そこで問題
「いでー、階段がらおじだじゃ」を標準語に訳しなさい。
8 「おほ」の話
先日、サウナ室(私の住む独身寮のお風呂にはサウナが付いているのです、
それもかなり大きいやつが)において八戸から出張で来た後輩と話をしている最中に、
私「ところでよ、んがほうでどぶろぐのごど”おほ”ってへるど?」
<ところで、お前のところで”どぶろく”のこと「おほ」っていうか?」
後輩「”おほ”ど」<”おほ”ですか?>
この話を向かいの席で聞いていた七戸出身の先輩が
「どぶろぐのごど”おほ”ってへるべな、んがんどはどごのやづだっきゃ、なんぶのくせして。
いやあっついじゃ」<どぶろくのこと”おほ”って言うだろうが、お前達はどこの出身なんだ?
南部人のくせに。ああ熱い>といいながらサウナ室から出ていきました。
後輩「”おほ”ったらふぐろうのごどでねのすか?」<”おほ”といったら
梟のことじゃないのですか?>
私「んだよなあどぶろぐあ”どんべ”でえな」<そうだよなあどぶろくは”どんべ”だよな>
後輩「んだんだ”どんべ”だ”どんべ」<そうだそうだ、”どんべ”だ”どんべ”>
ということで、同じ南部人でも三八地方と上北地方で通じない言葉があるということを
思い知らされた入浴タイムであった。
「んが」は前にやりました、今回は「どんべ」の「ん」です。発音はするのですが、
短く小さくです、間違っても<どん衛兵>と発音してはいけません。
7 「はんかくさい」はどんなにおい?
通常は「はんかくせ」と、使います。意味は<恥知らず>とでも言いましょうか
ちょうどいい標準語が思い当たらなくて、翻訳に苦労しています。
これに似た言葉として「ばがくさい」これも通常は「ばがくせ」と使い、意味は
<馬鹿みたい>です。
あと、後ろに「くさい」が付く「にだくさい」<似ている>これも
「にだくせ」と使います。
どの言葉も、においを表す言葉ではありませんが、まれに「へくさい」<おならの臭いがする>
というように臭いを表す言葉もあります、しかし基本的に臭いは「かまり」であり「へくせ」は
例外と言ってよいでしょう。
A「ヤッ、へくせじゃ、んがぁへしたべ?」<アッおならの臭いがする、貴方おならをしたでしょう?>
B「なんも、わでねじゃ」<いいえ、私ではありません>
A「んだってへくせィエ」<だけども、おならの臭いがするよ>
B「もしかして、これでねど?」<もしかしたらこれじゃない?>
A「なんだっきゃ、ゆで卵でねが、はあ〜あ、ばがくせ」
<なんだ茹で卵じゃないかアーア馬鹿みたい>
はんかくさい話でした。
6 「へる」は<喋る><入る>も「へる」
発音はどっちも同じです「はやぐへろぉ」
最後の「ぉ」は長音を意味するものですが真っ直ぐ延ばすのではなく下がり気味に、
だんだん小さくなるように発音します。
意味は<早く入れ>又は<早く喋れ>なのですが、このままじゃどっちの意味なのか
判りませんね。前後の状況を見て臨機応変に対処しましょう。
ちなみに<入れる>も「へる」なのですが、こちらは「る」にアクセントが来ます。
5 南部の「わがね」と、津軽の「わがね」
南部の「わがね」は<だめ>と<判らない>、
津軽の「わがね」は<判らない>なのです。
津軽には<だめ>という意味の「まいね」 がありますが、南部の場合は、
この<だめ>と<判らない>を「わがね」という一つの言葉で
まかなっているのです。
正確には<判らない>は「わがんね」というふうになります。
例 1,(判らない) 先生<どうだ、この問題解けたか?>
生徒<判りません>
南部弁 先生「どんでぇ、わっがったど?」
生徒「「わがんねぇじゃぁ」
例2(だめだ) お巡りさん<ちょっと、お婆さん、信号が赤だから
渡っちゃだめですよ>
南部弁 お巡りさん「こらっ、ばば、信号あがだへんで
わだればわがねっ」
4 「こっぱずかしい」 は、どこの言葉?
テレビドラマでよく使われる「こっぱずかしい」、ドラマをみていると、
まるで青森の言葉のように使われてますが、南部弁で<はずかしい>は
「しょしぃ」あるいは「しょすぃ」であり、津軽弁では「めぐせ」なのである。
ちなみにこの「めぐせ」南部弁では<みっともない>あるいは<ブス・ブ男>を
意味する言葉なのです。
3 食べる「スス」 煙突の<すす>
これも「あ、い、う、イ、お」と同じで「し」と「す」の区別がつきにくい
というより区別できない。(実際に、かなり昔に流行ったギャグである)
本人は「し」と発音しているつもりでも、関東以西では「ス」に聞こえるらしい。
この「ス」が原因で、私の知人が若いときに沖縄でかなりいじめられた
と言う話を以前聞きました。
先輩が、彼に「新聞」っていってみな。
彼「スんぶん」
先輩「おい聞いたか?「スンブン」だってよ。」ギャハハハハ
彼が標準語を猛勉強したのは言うまでもありません。
2 「あ、い、う、え、お」 と 「あ、い、う、イ、お」
標準語の「い」 と、南部弁の「イ」 は同じではない。
海老は「イび」、井戸は「いど」
というわけで「い」と「え」の区別がつきにくい、だからといって
「いっしんとおし」<頑固者>を「えっしんとおし」とは言わない。
もう一つの 「が、ぎ、ぐ、げ、ご」とは、私たちが一番最初に習う五十音表には
乗ってはいないのですが、普段使っている単語や熟語の中にある、
「ぶら下がる、鍵(かぎ)神楽(かぐら)冬景色(ふゆげしき)たまご」の
が、ぎ、ぐ、げ、ご、のことを言います。
この が、ぎ、ぐ、げ、ご、は南部弁に限らず東北の言葉を勉強しようとする
人には必要不可欠なのです。
(1) が
これの発音要領は「が」の前に「ん」を付けて発音するわけですが、
「ん」は発音しません。そして「が」の時に息を鼻から抜くようにします。
この「が」自体が一つの言葉となっており、<おまえ>や<君>という
意味になっています。
例 おまえな〜
南部弁 がよ〜 発音要領 んがあよぉ〜
この言葉は、相手に対して落胆したときや、憤慨しているときに使いますが、
落胆しているときは語尾が下がり、憤慨しているときには語尾が上がり、
激怒しているときには語尾が上がりながら最後に「ッ」で止まります。
(2) ぎ
これは前に「ん」は付きませんが、発音要領は非常に難しく、現在の私の
文章能力では表現が困難なので割愛させていただきます。
単語 ぎぁない
この単語は、前の会話によって意味が変わる言葉で、<寂しい>や
<悲しい>あるいは<つまらない>と言うような意味を持っています。